2024年すし業界10大ニュース
2024年の鮨業界10大ニュースを総括します。
▼トピックス
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①女性すし職人の躍進
②食材費の高騰
③なりたい職業で寿司職人の人気が急上昇
④ドバイの寿司職人
⑤見直される社員教育
⑥地域ブランディングに寿司活用
⑦インバウンド需要の回復
⑧伝統的酒造りがユネスコ無形文化遺産に登録
⑨海外就職の動向
⑩間借り・出張・キッチンカー
①女性すし職人の躍進
幸後綿衣さんの独立開業までを追った情熱大陸が2024年1月に放送されました。銀座「鮨あらい」の2番手として多くの食通を魅了し、23年11月に「鮨めい乃」をオープン。瞬く間に予約困難店へと成長します。24年11月には、The Best Chef Awardsを受賞。多数のミシュラン3つ星シェフが名を連ねる権威ある賞です。彼女の成功は、女性が鮨職人として活躍する時代の到来を象徴しています。
②食材費の高騰
コメ、海苔、魚。寿司を構成するあらゆる食材が高騰しています。原油価格の上昇に伴う物流コストの増加に加え、地球温暖化が影響を与えています。特に、海水温の上昇により魚の生息域が北上し、生態系のバランスが崩れています。その結果、質の高い魚の確保が困難になっています。一方で、寿司の需要は世界的に拡大しており、高級寿司店においては高品質な食材の安定供給が課題となっています。
③なりたい職業で『寿司職人』の人気が急上昇
高校生のなりたい職業ランキングで(料理人/シェフ)が急上昇しています。(※第一生命調べ)「寿司職人になって海外へ行く」「どこに行っても何歳でも技術を磨ける仕事で面白い」と、世界で通用する技術を得られる仕事のイメージがあるようです。高校を卒業して沖縄から上京した岡田幸輝さんは、アカデミーで学び、現在は都内の有名店で修行しています。
④ドバイの寿司職人
タックスヘイブンとして知られるドバイ。税金がかからないのでお給料は額面がそのまま手取りになるのが魅力です。ドバイでも鮨の人気は高く、ミシュラン一つ星を獲得した「Hōseki」をはじめ、高級寿司店が増加し、すし職人の需要は高まっています。ドバイで活躍する日本人すし職人を報じるニュースも注目を集めました。
⑤見直される社員教育
あらゆる業界で人手不足が深刻です。スキマバイトの「タイミー」を活用する店が増えているのも頷けます。そんな中、定着率や意欲向上を目的とした社員教育に力を入れる店が増えています。寿司職人はその修行期間の長さが度々話題に上がりますが、体力のある鮨屋、特に多店舗展開している店では、新人の研修用に低価格帯の店舗を経営するなど、レベルに合わせた活躍の場を提供しています。ミシュランガイド東京2025では、鮨かねさかの金坂真次氏が指導者としての手腕が評価され、メンターシェフアワードを受賞しています。
⑥地域ブランディングに寿司活用
外貨獲得NO.1市場として注目される観光インバウンド。今、日本中で外国人旅行客の争奪戦が始まっています。富山県と北九州市は、寿司を活用した地域ブランディングに期待を寄せており、「寿司といえば、富山」や、「すしの都 北九州」という宣言を通して地域の魅力を発信しています。
⑦インバウンド需要の回復
日本を訪れる外国人旅行者数は、コロナ前の水準を上回る状況が続いています。円安も要因の一つです。寿司の人気は高く、特に高級鮨店は彼らの訪問が業績を押し上げる要因となっています。また、コト消費としての「お寿司の握り体験」の人気が高く、日本ならではの体験をしたい方達に喜ばれています。
⑧「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録
2024年12月、日本の「伝統的酒造り」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。この認定は、寿司業界にも大きな影響を与えると期待されています。日本酒は寿司との相性が良く、そのペアリングは双方の味わいを引き立て、食事の楽しみをより一層深めるものです。この流れを受け、鮨職人には日本酒に対する深い知識や提案力が求められる場面が増えてくることでしょう。
⑨海外就職の動向
寿司職人の海外就職は近年、多くの日本人にとって魅力的な選択肢となっています。移住先として注目の地域はカナダや、アラブ首長国連邦。2022年からミシュランガイドが発刊され、鮨の需要が拡大。トロント唯一の2つ星「Sushi Masaki Saito」や、バンクーバーの1つ星「Okeya Kyujiro」、ドバイの「Hōseki」がその人気を牽引しています。一方で、アメリカは移住先として一番人気の国ですが、トランプ政権になることでビザ取得のハードルはより一層上がるだろうと言われています。が、若い方達は適切に修行を積むことで乗り越えていけるはずです。
⑩間借り・出張・キッチンカー
キッチンカーで開業した『鮨さきがけ』の小林魁さんが話題となりました。法改正でキッチンカーでも『生もの』の提供が可能に。寿司の売り方も選択肢が増えました。固定費のかからない出張鮨での起業も人気です。間借り営業を経て独立した新宿の「すし日和」は開業直後から予約が殺到する成功を収めています。店主の清水さんは飲食業未経験から2年という短期間での起業でした。
挑戦する人の世界は広がっていきます。