元プロ野球選手が45歳で寿司職人!アメリカ開業のために高級店を巡りデータを蓄積中
インターンコース19期を4月に卒業した佐々木慎一さん(45)は元野球選手。社会人リーグ、USAマイナーリーグで約12年プレーする。すしアカデミーへの入学はアメリカで寿司屋を開業することが目的。
「寿司も野球も職人の世界。自分のパフォーマンスでサラリーをもらえるのは自分に合っている。体が続く限り働きたい。」と語る。卒業後はアメリカ・ダラスの寿司屋への就職が内定している佐々木さんにお話を伺いました。
編集部:佐々木さん。よろしくお願いします。
佐々木さん:お願いします。
編集部:これからアメリカのダラスで働くことが内定されているそうですが、どういった経緯だったんですか?
佐々木さん:母親の親戚にロサンゼルス在住の日系人の方がいて、テキサスで「にわ」っていう日本食屋さんをやっているんですけど、今回、ダラスでお寿司屋さんを展開したいという話があって。
私がすしアカデミーに通っているという情報を聞いたらしく「どうなの?」って連絡があって。インターン研修で高級寿司店で働いているよとか話したんですけど、卒業後が決まってなければうちのお寿司屋さんを任せたいと。アメリカの話なのでどうなるかわかりませんが一応、10月・11月オープンで話が進んでいます。
編集部:お店の規模はどれくらい?
佐々木さん:8席から10席くらいのカウンターの寿司屋です。2回転できるか1回転できるかその辺の具体的な話はないですけども、高級寿司店として正統派のスタイルでやってほしいと。
編集部:佐々木さんが店長?
佐々木さん:日本人で寿司のリーダーとしてやってほしいと。店長とかそういう話は向こうはないんで。シェフとして。1人では無理なのでスタッフを探している状況です。でも紹介するにも条件を詰めないと話もできないので。
編集部:これから契約を詰めるんですね。
佐々木さん:そうですね。5月7日にロサンゼルス行って10日に帰ってくるんですけど、その間にダラス行ってという感じですね。
海外での寿司店開業が目的
編集部:楽しみですね。佐々木さんは最初から海外で働きたくてアカデミーを受講されたんですよね。
佐々木さん:ゆくゆくはと思っていたので、この時点で行くのが正しいのかどうかはまだわからない。でも一応そういう話になってます。
編集部:ダラスのお話は講師とか同期の方たちには相談しました?
佐々木さん:いや。お話いただいたのもつい最近なので。アメリカはそういう話がちょこっとでも始まっちゃえばキックオフするとすごい早いんで。この先がどうなるかのも現地に行ってみないと分からないですからね。
自分のパフォーマンスでサラリーをもらえるのは自分に合う
編集部:お寿司の学校に入る事を決めた時のご家族の反応ってどうでしたか?
佐々木さん:野球をやっていましたが、野球選手も寿司職人と一緒で下積みがあって、経験をひとつひとつ積み上げないとフィールドには立てない。そういう部分ではバッターも、守備も、ピッチャーも職人だし、何かを極めることで自分のパフォーマンスでサラリーをもらえるのは自分に合っていると思っています。
でも、野球は年齢を重ねると自分のパフォーマンスができなくなって引退しなくてはならない。お寿司の世界にもあるかもしれないですけど、自分の体が続く限りは自分で仕事をやっていけることに可能性を感じています。
野球はお客さんからの拍手とか、メディアに自分の名前が載ることがモチベーションになりましたけど、寿司はお客さんからの美味しいねっていう言葉をモチベーションに仕事ができるのが良いですよね。
学校に入るにあたって、家内もまたチャンスがあるんじゃないのって後押ししてくれて。年齢は同期の皆さんより20才くらい上ですが(笑)
編集部:奥さまが最初から応援してくれたのは心強かったですね。
佐々木さん:そうですね。楽しみにしてくれています。
社会人リーグの選手からマイナーリーグでプロに
編集部:佐々木さんは住友金属さんで野球選手として現役で8年やって、社員として通常勤務をされていたんですよね?
佐々木さん:はい。購買部、契約担当です。物品の例えばスラブって分かりますか?
編集部:スラブ?
佐々木さん:80tとかこのアカデミーのビルくらいの大きさの溶鉱炉の中に溶けた鉄鉱石が入ってて、それを300m上から流し込んで、スラブって鉄の板にしていくんですね。厚さでいったら3mくらいの。
板にしていって表面を砥石で削るんです。グラインダーみたいのでガァーンときれいに表面を。そういった砥石とか、機械設備とかを購入する契約担当を野球が終わってからしていました。
編集部:何年くらい働かれたんですか?
佐々木さん:1年ちょっとくらいですね。その間に都市対抗っていう社会人野球のトーナメント大会があって、住友金属とか、パナソニックとか三菱とか集まって東京ドームで年1回行われる。メジャーリーグのスカウトも来るような大会なんですけど。
私も野球部の裏方としてスーツ着て球場の中にいたんですけど、たまたま僕の後輩でこれからホワイトソックスに入る選手がいまして、彼にスカウトとの通訳を頼まれたんです。
そんな折にそのスカウトから、引退して1年ならまだできるだろうって、守備もすぐ必要だから来月から来てくれと声がかかりまして。それですぐ退社して3年半くらいマイナーリーグの野球選手として活動しました。
編集部:奥さまとはどこで出会われたんですか?
佐々木さん:海外で野球やってる時に家内も向こうの大学院に通っていて。試合見てて日本人て珍しいねということで、食事に行くようになったのがきっかけですね。子供ができたのは完全に野球を引退してからですね。今は6才で小学校1年生です。
野球選手のセカンドキャリア
編集部:野球選手って若くして引退される方も多いと思いますが、セカンドキャリアで苦労される方っていっぱいいるんじゃないかなと素人ながら思っています。球団とか野球業界全体として何かサポートっていうのはあるんでしょうか?
佐々木さん:球団の話をすると、スタッフとして残れるかどうかは本人次第ですね。現役のときにいくら野球が上手でも、私生活の対応、メディアへの対応、人間性とか。球団は現役の時からその人間性を見ているので。
人間性が素晴らしければ球団職員として残すし、大きな技量を持っていればコーチとして残すし、でも技量を持っていても人間性が伴ってなければ声はかからない。残るのはほんの数%ですね。
インターン研修で学んだ心配り
編集部:インターン研修はいかがでしたか?かねさかさんに行かれたんですよね。
佐々木さん:お客さまへの心配りがすごかったです。お店に入った瞬間からではなく、お店に入る前からの心配りですよね。電話の対応もそうですし。
パレスホテル店では大理石の廊下があって、足場ですけどひざついて雑巾がけをします。これはインターン生でもやります。ほうきで掃いたらゴミを絶対残しますからね。トップの方が美味しいお寿司を提供すること以上に、気持ちよくお客さんを迎えることを重要視しているんですね。
かねさかさんはとにかく隙がないですよね。衛生管理ができてて、気持ちよく安心して食べられるかってとても重要なことですよね。そういったところの準備から姿勢への指導は徹底していました。すごい良かったな、厳しかったですけどね本当に。
鮨かねさか薄葉店長の座談会の様子はこちら
https://www.sushiacademy.co.jp/1153297
編集部:アメリカのお店ではかねさかさんの文化を意識しそうですね。
佐々木さん:そうですね。システムとして口頭でそういうふうに言うのも良いんですけど、アメリカだと文化も違うのでちゃんとマニュアル化して教育機関を作りたいなと思っています。なおかつ私なんかまだまだ全くのど素人なので、自分のためにも必要かなと。
高級店を巡り寿司を研究
編集部:ご家族にはお寿司は握られましたか?
佐々木さん:まだちゃんとは握ってないですね。子供も奥さんもそうですけど、お寿司屋さんめぐりは相当しているので・・・
編集部:えー!そんな小さい頃から良いお店に?
佐々木さん:そうなんですよね。僕がやっぱり勉強のために相当、高級店を回らせてもらってて、その際は一緒に行ってるんでね。子どもがOKのところですね。
編集部:じゃあかなり舌も肥えて・・・
佐々木さん:シャリも色が異なればこの店はあっ!とか。
編集部:それは末恐ろしいですね(笑)どこかのタイミングでバシッと握って食べてもらいたいですよね。
佐々木さん:まぁでもそれはね。どうのなのかなと。今の時点では握れるようなレベルじゃないんで。
編集部:まだアメリカが本決まりではないですけど修行とかする計画はありますか?
佐々木さん:5月7日から向こう行って契約書とかその辺サインして、10日に戻ってくるんですけど、その後どうするか、オープンまで数ヶ月しかないんですけど、アメリカ行って魚を触るのか、それともオープンギリギリまで日本の魚屋さんとかお寿司屋さんで魚をガンガン捌いたほうがいいのかなって。
編集部:魚捌きをもっとスキルアップしたいということですね。
佐々木さん:そうですね。やっぱり日本にいる間に学べることは学びたいので。向こう行って学ぼうと思ってもやっぱり・・・
編集部:そうですよね。あともうメニューとかも決めなきゃですもんね。
佐々木さん:結局は雇われなんでその辺の話っていうのもこちらから振るというのもなかなかできないと思うんで。
編集部:でも店主とか店長クラスにはそういうメニューの提案とかも求められるみたいですけど。
佐々木さん:求められれば逆に楽ですよね。名前だけ揃ってて、そのメニューで作ってって言われる方が大変なんで。逆にこっちから提案できれば、今までいろんなお店回ったところでもらってる情報とそのノートで作れるんで。
編集部:やりたい構想はいっぱいあるっていうことですね。
佐々木さん:そういう引き出しはインターン研修とかいろんな形でもらったんで。小さいですけどね。任せてもらえるところの方がやりがいもありますし。こういうふうにあそこのところみたいにやってくれって言われるほうが大変かなって。
編集部:その辺も交渉しなきゃですね。佐々木さんご卒業おめでとうございます!良い条件で契約が結べることをお祈りしています。