高卒18歳で来月から東京の高級店で働くけど質問ある?
卒業後は都内の有名店で働く事が決まっている岡田幸輝さん(18)。集中コース176期の授業の合間を縫って就職活動をしました。学費も自分で用意して沖縄から上京しています。中々できることではありません。
しかし、彼を知っている人であれば、彼が決して器用な人間ではないことがわかるはずです。何者かになりたいという切実な願いを抱えている岡田さん。彼もまた、理想と現実の間でもがく若者のひとりなのです。卒業式を明日に控えた岡田さんに話を聞いてみました。
日本に対する漠然とした不安があった
最近『すごい英語独学』という本を買ってフレーズを覚えて、それを家でシャドーイングしているんですよ。
ーーー 内定が決まっているお店に海外のお客さんはよく来るのですか?
いえ。自分はまだ営業の様子は見させてもらっていないんですけど、親方が英語を喋れる方だし、ゆくゆくは必要になると思って勉強をはじめました。
ーーー 岡田さんは高校卒業後の進路として当初は、海外の大学を検討していたんですよね。
はい。当時、円安が続いていて、日本ってこれからどうなっちゃうんだろうという漠然とした不安がありました。実際、日本の大学に行くよりは海外の語学学校に行ってワーキングホリデーするって考える友達も多くて。
自分はやっぱり、社長になりたい、ビッグになりたいっていう思いがあって、調べてみたらオーストラリア大学のビジネス学部っていうところを見つけて、エージェントの方とも何回か面接をさせてもらいました。
費用とか、奨学金は借りられるかとか聞いたんですけど、英語力がIELTS5.5以上とか、やっぱ賢くないと奨学金の条件に入らないそうで。授業料も1年間で300万円と言われて断念しました。でも、マレーシア大学はもっと安いんですよ。授業料が1年で40万円だし、3年で日本の大学卒業の資格と同じ資格が取れるそうで、ここなら行けそうかなって。
ーーー そこから東京すしアカデミー入学に至った心境の変化は?
手に職をつけてから海外に行った方が、大学の学費や生活費を稼げると思ったんです。
自分で学費を用意するために
ーーー 岡田さんはYouTube番組の令和の虎に出演されて、虎にプレゼンをして、東京すしアカデミーの学費97万円を出資してもらって学校に来たんですよね。
はい。親がシングルマザーで弟もいて、家庭の事情的にすしアカデミーとか、大学の費用を親に頼ることができなくて、自分でどうにかしてお金貯めなきゃって考えた時に、令和の虎に出るしか無いと思って、9月に申込みをしたら直ぐに返事が来て、じゃあ来月撮影しましょうってなって。
ーーー 周りは大人だらけで緊張したんじゃないですか?
めちゃくちゃ緊張しました。収録前に、楽屋でスタッフさんが自己紹介の練習とか、サポートしてくれたんですけどそこでも自分、ずっと震えてて。もう本当に緊張して。で、いざ撮影スタートってなった時も足が震えてて、それは虎の方にも気づかれてたみたいです。
ーーー でも堂々とおっきい声で喋ってましたね。
自分は学がないんで、熱意を見せることしかできないと思って。だから、とりあえず自信満々にハキハキ喋るようにしました。
ーーー 岡田さんの考えに対して、厳しい意見も沢山ありましたが、最終的には水木社長と坂井社長が出資をしてくれました。どう思いましたか?
あの時、いろんな方に自分の思いを論理的にも跳ね返されてたんで、自分の気持ちは伝わらなかったし、もう無理かなって諦めていました。それをひっくり返してくれたので、自分のことを応援してくれる人が世の中にいるんだって、感情が高ぶって泣いてしまいました。
考え方が変わりました
ーーー 10月にYouTubeで配信され、半年後の5月に東京すしアカデミーに入学。そして、あっという間に2ヶ月が経ち、明日は卒業式です。担当の杉田講師が岡田さんはこの2ヶ月ですごく変わったと言ってましたよ。
え?本当ですか。それはちょっとびっくりです。杉田先生が講師の中で一番好きな先生なんでそう言われてめちゃくちゃ嬉しいですね。
ーーー 私も岡田さんの変化を感じます。多分、何回か生まれ変わってるんじゃないかと思うのですが、ご自身でこの2ヶ月を振り返ってみていかがですか?
考え方が変わりまくりで、もうどこから話せばいいのか分からない状態ですが、すしアカデミーに入った頃は、卒業したら直ぐに海外に行くつもりでいたんですよ。
アカデミーの廊下に掲載されている求人票を入学式の日にチラっと見て。あぁ、オレ勝った。海外へ行けるラッキー!って思ったんですよ。そしたら、福江校長に偶然声掛けてもらって、お金がないとか、英語力がないと厳しいってことでアドバイスをもらって。
ーーー 岡田さんは学校に来た時の貯金が……?
10万円です。
ーーー その10万を握りしめてアカデミーに来て、そのままオーストラリアに行こうと思ってたんですよね。
はい。行こうと思ってました。オーストラリアで稼いだらいいと思ってたので。
ーーー でも、現実的には住むところを契約しなきゃいけないし、渡航費の問題もあるし、生活費の事も考えなきゃいけないし、まずは国内でお金を貯めようってなったんですよね。
はい。そこから考え方が変わって、福江校長とかいろんな方の話を聞いて腑に落ちたんですよ。自分、こんなんで海外へ行けると思ってたのかみたいな。英語力もないし、お金もないし、福江校長が言ってたように、数年は日本で修業した方がいいって。
沖縄の時の自分だったら全くそんな考えには至らなかったんですよ。だってホリエモンが言ってたじゃないですか。修行なんてしなくて良いって。でもやっぱ、改めて日本での修行の大事さに気づけて。
ーーー その他に変化したことはありますか?
技術は成長しました。最初、包丁の使い方とか全然分からなかったんですけど、毎日毎日反復練習を続けるうちに、魚がさばけるようになって自信がついてきました。
ーーー アジの三枚おろしのテストは何点でしたか?
95点です。
ーーー それは高得点ですね。頑張りましたね。
魚さばけて楽しいなって思うのと同時に、昔から魚さばける男って格好いいイメージがあったので、ついに自分も捌けるようになったかって、感無量です。
都内の高級店で修行します
ーーー 岡田さんは既に都内の高級店から内定をもらっているんですよね。
はい。今は入社前ですけど、学校のない土曜日の午前中だけ仕込みの様子を見学させてもらっています。
ーーー お店の親方はどんな方ですか?
親方は最初はめちゃくちゃ怖いイメージがあったんですけど、でも、実際に話を聞いたり、仕事の様子を見ていると、本当に優しくて。自分の質問にもちゃんと答えてくれるし、笑顔もめちゃくちゃ優しくて。
その後も、お昼ご飯を女将さんとか、兄弟子さんとみんなで一緒に食べさせてもらっているんですが、その時も楽しくて。本当にいい職場だなって。良くして頂いています。
ーーー まだ見学だけとのことですが、親方から何か教わりましたか?
そうですね。メモしようと思ったんです。分量について聞いたりして。でも今はこういうのは覚えなくていいって言われて。今の岡田君ができることは何なのか自分で感じることが大事って言われて。考えてみたんです。
最近気づいたんですけど、親方が仕込みしてる時に空のコップを見つけて、そこに氷入れて、お茶を入れますかって言ったんですよ。そしたら、よろしくって笑顔でありがとうって言ってくれて。めちゃくちゃ気持ちいいな、嬉しいなって思って。
その前の週に、お昼を一緒に食べてた時に自分、ご飯に熱中してて親方のコップが空になっているのに気づかなくて。でも、先輩はさっと気づいて親方のコップに水を注いでて。そういうのは自分が絶対やるべきだなと思って。そういう、替えがきくような自分でもできるようなことは今後見逃さないようにしなきゃって思いました。
あとは、お魚屋さんが来た時も挨拶は誰よりも早く元気良くしてみたり、ちゃんとそういうので信頼をしてもらって、任せてもらえる仕事を増やして行けたらと思っています。
修行への不安を乗り越えて
ーーー 176期の同期生からもアドバイスをもらったんですよね。
はい。内定をもらった時、嬉しい気持ちと同じくらい、その時はまだ、寿司職人の世界に飛び込むことに不安があって、弱音を吐いてたんです。修行って必要なんですか。ホリエモンはいらないって言ってますけどって。そしたら、同期のAさんがLINEでアドバイスをくれて。
※長文のLINEメッセージを見せてくれました。プライベートなメッセージなのでそのまま掲載するのは控えますが、丁寧な言葉と、心理学用語を用いて、組織の中で信頼を得ることの重要性を説き、そのためには修行が重要であるということを論理的に説明していました。
ああ、なるほどって。ここで一気に考え方が変わって納得できたんですよ。自分、地元の友達からなんで寿司なのってよく聞かれたんですよ。で、適当に面白おかしくホリエモンが言ってたからって答えてたんですね。でも、割と本心で。自分、ホリエモン信者なんですよ。
でも、堀江さんの話を持ち出すと、品がないとか、自分の軸を持ってないとか言われるの何か、納得いかなくて。きっかけはホリエモンだったかもしれないけど、修行、怖いなって気持ちもありましたけど、でも、色んな人のお話も聞いて考え方も変わったので、この先の自分を見ててほしいなって思います。一生懸命がんばるので。
ーーー 岡田さんの今後の目標は?
お父さんに寿司職人になることを報告したんですよ。厳しい世界だし、自分が通用するかわからないけど、それでも25歳までは頑張るって話しました。でもお父さんに、お前は決めつけすぎなとこがあるからそんな先のことまで考えないで、とりあえず今を精いっぱい頑張ることに注力しろって言われたんですね。
確かにそうだなって。目標を持って生きた方がいいって言う人もいますけど、今の自分にはお父さんの「今を精いっぱい頑張れ」って言葉の方がしっくりくると言うか、だから、先のことは分からないですけど今は目の前のことを頑張ろうって思っています。