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ラスベガスのシェフの給与相場は6〜900万円!成功する寿司シェフの条件とは?

在米25年の講師・津本が語るアメリカの寿司ビジネス事情、パート2。アメリカはもっとも人気のある国です。アメリカで働く寿司シェフには何が求められるのでしょうか?

講師プロフィール

氏名:津本 浩嗣 (つもと ひろつぐ )
出身地:日本
担当コース:海外からの受講生対象コース・江戸前寿司集中特訓コースなど
経験:アメリカの大学で建築・コンピューター・アートなど学ぶ。
建築事務所勤務を経て和食レストランの内装デザインを手がけたことをきっかけに寿司の道へ。
在米中はラスベガスの和食レストラン”Aburiya Raku Las Vegas”などでシェフとして勤務。
2016年夏、25年ぶりに帰国。現在は東京すしアカデミーで主に外国人対象クラスの講師を務める。

アメリカ就職の難易度

前回は私の在米経験の中からラスベガスという街がいかに桁違いなマーケットであるかをお話しました。そしてこの土地にはアメリカンドリームを求めて人々が集まってきます。もちろん寿司職人にとっても同じことが言えるでしょう。

近年、日本では海外就職の手段として寿司職人を選択する方が増えています。中でも人気の国はダントツでアメリカです。学校にいても「アメリカで就職するためにはどんな手段があるのか」という質問が止みません。

ただ近年特にアメリカ政府は移民に対して大変厳しい方針を打ち出していますし、就業ビザを取得することも簡単ではない国です。運良く渡米した場合でも外国人にとって長く安定して働くにはそこそこ厳しい環境であるとお考えいただいて良いでしょう。

だからこそ、入念な計画と心構えが必要です。

料理の幅がシェフの価値

では実際にアメリカで働くとはどういうことか。成功例はどんなものか見ていきましょう。ラスベガスのシェフの給与相場は5万USドル(約600万円)〜7万5000USドル(約900万円)です。他のアメリカの大都市と比較すればラスベガスの生活費は安いので、この待遇は好条件と言えるでしょう。

また、日本の寿司業界と比較するとシェフのランク分けが明確です。シェフ、スーシェフ、ヘッドシェフという様に職位が上がっていきます(位の定義や名称は店によって異なります)。あなたが寿司職人で、レストラン業界で高待遇を得たいのであれば最終的には最高位のヘッドシェフを目指すことになります。

アメリカの日本食レストランは寿司だけでなく日本食全般を扱う場合がほとんどです。日本には「専門店」と言う考え方が根付いており、寿司屋は寿司を出すものと決まっていますが、アメリカではお寿司しか知らない人はヘッドシェフにはなれません。

ヘッドシェフにはジャンルを超えた料理の知識や経験が求められるのです。例えばフレンチの技法や見せ方、世界各国の食材を知っておくことも重要です。寿司職人でもネタにキャビアを使うことは珍しくありません。

特にラスベガスのようにホテル内に様々なジャンルのレストランが共存しているような場合は店舗をまたいでこれらを統括できるだけの知識が必要になります。ヘッドシェフは世界中の食材、調理技法、それもメインからデザートまで自力でメニューを開発して調理できる人材でなければならないのです。

アメリカの高級店では日本食にも好んでフォアグラやキャビアが使われます。世界中の素材を寿司に転換できるレベルの技術があって初めてヘッドシェフになれるのです。

経営者になるには

ヘッドシェフまで上り詰めたら、次に考えることは「自分の店を持つ」ことでしょう。これも日本での出店とは大きく事情が違います。投資が明暗を左右するのは前回のブログでお話しした通りです。

投資額も数千万円ではなくて数億円の投資を受けてやっと成功する世界。そのためシェフの多くがアメリカまたは海外から投資家との出会いを待っています。ただし投資家と出会うにも本人の努力次第。

人は人についてくるわけですからまずは自分を一シェフとしてうまくセルフプロデュースし、一人でも多くのお客様にファンになっていただくことです。その無数のお客様の中の一人が投資家なのです。

また投資を受けただけでは超人気店にすることは難しいでしょう。例えばスターシェフ・Nobu氏をスカウトしたロバート・デ・ニーロ氏。彼を筆頭とした投資家チームは投資戦略・経営・宣伝などの超プロフェッショナルがバックについていました。一言にレストランをヒットさせると言っても様々な経験と知識が必要になります。

それぞれの目標・ゴール設定を

ここまであまり現実味のない話をしてきましたが、一口にアメリカで就職したいと言っても求めるゴールは人それぞれだと思います。必ずしも経営者を目指す必要はありませんが、リスクをおかしてアメリカにいく以上はそれなりのシナリオとゴールを設定をしていった方がいいでしょう。

ただ「アメリカに住みたいだけの人」は私が知る限りほぼ100%の割合で5年以内に日本に帰ってきます。また、「アメリカで生活していくこと」のみを最終目標にするのであればそれほど難しいことではありません。

生活することが目的なら日本もアメリカも難易度はあまり変わらないので住みたいだけの人はどちらの選択でも良いような気がします。ただ私個人はアメリカの方が住みやすいと感じています。

生活の質、給与水準、仕事に対する評価の正当性などを改めて比べるとアメリカの方が断然質が高いと思います。力を認めてくれる土壌があり、その対価としての給料が払われるので納得感があるのかもしれません。

ただ、繰り返しになりますがそもそもアメリカの大都市にいるようなシェフは標準レベルが高いので日本人シェフがその中で対等にやっていくだけでも、日本で働く時以上の努力が必要だと思います。

転機をチャンスにできる人に成功が訪れる

働いていると様々な転機があると思います。その一つ一つをチャンスに変え続けることができる人が成功する人です。実は私自身も職人歴1年半、30歳の時にある投資家に声をかけられましたが、独立にはまだ早いと考えてお断りしました。

今思うとその時のお話を受けていたら人生も大きく違ったのではないかなと思います。ラスベガスにいるシェフならたとえ経験が1年しかなくても投資の話があれば食らいついていく人は多いです。

本当に彼らの度胸はすごいと思います。これからアメリカや世界で働こうとしている方に伝えたいのは、自分に訪れているチャンスに気づいて欲しいということ。それを最大限に活かすための努力を日々惜しまないで欲しいということ。

極端な話ですがビザが出るかもでないかもなんてことで躊躇しているなら、もうそこまでです。どうしても行きたいなら一度観光ビザで訪れてみてください。まずは現地の空気を感じてみる。良さそうな店があったら無給でも良いから働けないかお願いしてみる。

お金がないから行けないと言う人も同様です。とりあえず、いってみるんです。宿泊費がないならレストランの床に寝かせてもらってもいいわけですから(笑)。まあ極端な話ではありますが、私がラスベガスで働いていた時はそういう人が多くいました。どうしてもやりたいことなら手段を問わずに一歩でも前に進めてみると言う覚悟をして欲しいなと思います。

前回のインタビュー「一晩で480万円!?ラスベガスのクレイジーなSUSHI事情」もあわせてお読みください!

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