女性寿司職人ポルトガルで日本食レストラン経営!飲食未経験 語学の壁も乗り越えて
卒業生 小森美穂さん インタビュー
東京すしアカデミー卒業生の多くがヨーロッパで活躍しています。
特に食材が豊富な海沿いのヨーロッパ諸国では
寿司シェフやプライベートシェフ、ケータリングなど様々な形で
寿司ビジネスに携わる方が増えています。
今回はポルトガルで寿司職人として活躍する卒業生の小森さんにお話を伺いました。
小森美穂さんプロフィール
職種:寿司ヘッドシェフ
勤務地:ポルトガル
経歴:1年間の語学留学のつもりで滞在していたポルトガルで
寿司職人になることを決意し、東京すしアカデミーに1か月間入学。
その後リスボンの日本食レストラン2店で勤務した後にケータリングをメインに
スペイン・イビサ島でのプライベートシェフなどフリーランスの寿司職人として活躍。
約4年間寿司レストランを経営した経験もあり、
現在3年を目途に母校の東京すしアカデミーで講師を勤める。
ポルトガルに渡航したきっかけは?
10代の後半からイギリスに2年半住んでいた経験があり、
英語にもイギリス文化にも馴染みがあったので、
ヨーロッパの英語圏じゃないところと元々決めていました。
その中でもポルトガルを選んだのは、気候の良さ、
食べ物の美味しさ、物価の安さ、治安の良さです。
あとは、他にポルトガルに行った人からとても良かったという話を
聞いたこともあってポルトガルへ行くことを決めました。
きっかけは29歳の時に語学留学で渡ったポルトガルで、
お寿司の人気が高まっていることを肌で感じたことです。
それまで飲食業に携わった経験はなかったものの、
「これはお寿司が出来れば仕事になるな」と思い、
ポルトガルに行って4か月後くらいにネットで東京すしアカデミーを見つけ、
2004年の2月に日本にお寿司の修行をしに一時帰国することに決めました。
リスボンの街並み
リスボンの街は坂が多い
リスボンの夕暮れ
東京すしアカデミーに入学したきっかけは?
当時は他に寿司を短期間で学べる場所がなかったんです。
しかも、1か月(※)というのはそれまでの常識からは考えられなかった。
当時は魚もさばいたこともありませんでしたが、
東京すしアカデミーに行けばどうにかなるかなと思いコースを受講しました。
ただ、これは私にとっても大きな決断でした。
既にポルトガルに住んでいたため、受講料はもちろん渡航費もかかり
安いものではなかったからです。けれど相談した友人に
「でももし本当にそこで寿司職人として仕事ができれば
ポルトガルに戻って数か月で元が取れるじゃないか」と言われ、
思い切って入学することに決めました。
※現在1か月コースはなく、最短2か月のカリキュラムとなっています。
ポルトガルで働くメリット・デメリットは?
メリットは食材が豊富なことですね。
他のヨーロッパと比べても、魚の種類も全然違いますし、
お客さんも魚に食べなれているので日本食はポテンシャルがあります。
今でも既に日本食の人気はありますが、
これからもどんどん盛り上がる可能性はあると思っています。
デメリットはすごく小さい国なので業界内でのせめぎあいが
結構あって面倒くさいところかもしれません。
ポルトガルのような小さな国だと、業者や競合他社が皆知り合いなんですよね。
そうすると、他の料理人さんや料理屋さんの噂が入ってきて面倒くさかったりという点はあります。
寿司職人のご主人とイベントに出演
職人同士、食材の情報共有や一緒に買出しをすることも
休日の息抜きはもっぱら近くの海で
ポルトガルで寿司職人として働くこととは?
世界的も全然知られていないのですが、ポルトガルは海産物に非常に恵まれた国です。
ポルトガル人の商売下手がすごく出ているんですが、
実は海産物に限らずポルトガルにはスペインの産物として有名な
イベリコ豚と全く同じものがあったり、埋もれている食材は沢山あります。
先ほどお話ししたように、ポルトガルには日本食のポテンシャルが溢れています。
あと、料理人もすごく才能のある若い料理人も出てきていて、
ただそれが知られていない。私が経営する側に立った時に
若い料理人達にチャンスを与えたり知識を与えたりすることがあったので、
そういうことによって料理界を盛り上げていきたいという気持ちもありましたし、
それがやりがいかなと思います。
海外での生活や仕事で苦労したことはありますか?
まず、物事の進みが遅いことです。
不必要な手続きが延々と続いたりする面は非常にストレスでした。
例えば、業務用の食洗器を買っても品質が悪くて
一か月で買い替えになったりする上に、修理する人を呼んでも
「今週は来れない。一週間後に行く」と言われた挙句、
来たと思ったら「道具を忘れたから今日は出来ない」と言われるなんてことも。
あとは働くことへの考え方が日本人とは全然違うことです。
日本人だったら始業時間から就業時間、きっちりとその時間働くのが普通なのに、
ポルトガル人はその中でどれだけ怠けて時間を過ごすかと考えている部分が
あってすごくストレスでした。お店を運営しているときは
特に一緒に働いている人の意識の違いで仕事の進み方が全然変わってくるので大変でしたね。
新鮮な魚介の獲れるポルトガルは和食に求められるレベルも高い
リスボンでは6月に鰯を大量に焼いて皆で食べる祭「聖アントニオ祭」が開かれる
勤めていた和食レストランでは日本語と縦書きのメニューで日本らしい演出を
語学の壁はどう乗り越えましたか?
ポルトガルに渡った当初は全くポルトガル語なんて喋れませんでした。
ですが、ポルトガルは若い人やお寿司を食べるような
インテリ層はほぼ英語を喋るので生活も仕事も英語で乗り越えることが出来ました。
でも、やっぱりお店を経営する側になると言葉が喋れないとダメなんですよね。
だから、日々お店で働く中で「今なんて言ったの?」
と聞き返したりして疎通出来るよう勉強しました。
今後の目標を教えてください。
現在、同じく料理人として働くポルトガル人の主人が
日本で和食の研修をしていることもあって、
3年間を目途に東京すしアカデミーで講師として働いていますが、
それが落ち着いてからはまたポルトガルでお店をやりたいと思っています。
海外就職希望の方にアドバイスをお願いします!
海外で働く際に大切なことは二つあります。
まず一つ目は、自分が一番居たい国を選ぶこと。
お給料がいいとかではなくて、その国にいたいという
気持ちがある国に行くことが一番大切です。(東京すしアカデミーの)在校生の中でも中々行く国が決まらず、最初は待遇などで選びがちですがその国が本当に好きでなければ続きません。
そうでないと、結局この国は嫌だと言って流れて行ってしまうし、
実際にポルトガルでそういった人も多く目の当たりにしてきました。
自分がその国にいる理由として「好きだから」という理由は
やっぱり強いと思うんですよね。
二つ目はとにかく一度外に出てみることです。
「語学が出来ないから~」などといった理由で
なかなか外に出ない人が多いと思いますが、
とりあえず一旦外に出てみれば日本のことも客観的に見ることができるし、
日本に居たら気付くことのなかったようなチャンスも
海外では気付くことも出来ます。
だから、若い人は怖がらずにどんどん外に出て行ってほしいですね。
小森さん、ありがとうございました!
現在、日本へ一時帰国している小森さんですが、
ポルトガル滞在時に寿司職人として日本食レストランで働くだけでなく、
プライベートシェフとしてフリーランスで働いたのちにお店の経営をするなど、
非常にチャレンジ精神旺盛で素敵な方でした。
本日伺えなかったポルトガルでの裏話はもっとあると思うので、
気になる方は是非東京すしアカデミーで小森さんとお話してみてください!