やっぱり手に職!海外で働くなら「寿司職人」
この数年、海外に住む手段として寿司職人を選択する人が急増している。
東京都在住の梶 宏(かじ ひろ)さん(31)もその一人だ。
手に職をつけたい、だから寿司職人
前職は看護師という梶さん。
ワーキングホリデービザを取得しニュージーランドに行くことが決まっている。
奥さんが仕事でニュージーランドへ赴任することになったことがきっかけだ。
梶さん自身もニュージーランドには高校時代に留学していたため馴染みがある。
何より、世界の色々な場所で働きたいという想いは昔から強かった。
現地ですぐ職に就きたい。そのためにはどんな仕事が良いのか?
「手に職があると就職は圧倒的に強い」という事実は看護師時代にも感じていた。
それが海外となると、やはり日本人としての特殊な技術は高く評価されるはずだ。
今までに調理経験はほとんどなかった梶さんだったが、思い立ったら吉日。
学校の授業見学会で雰囲気を見て、その場で入学を決めた。
覆された寿司のイメージ
寿司学校に入学して「寿司のイメージががガラっと変わった」という梶さん。
「最初は、寿司なんて誰が握っても同じだなんて思っていたんです。
学校はただ、パフォーマンスや見せ方、盛り付けなどの
プラスアルファの部分を学ぶ場なんだと。実際は全く違いました。
同じシャリと同じ材料を使っているのに、先生の寿司と僕の寿司は全く味が違うんです。」
色々な寿司を食べ比べた経験があるわけでない彼でも、先生との違いはすぐに分かった。
圧倒的な技術の差を見せつけられ、「寿司は特殊技術だ」と感じることになる。
入学後は寿司のジャッジ基準が全く変わってしまい
「スーパーで売っているお寿司が美味そうに見えなくて、それはそれで困る」という。
「学校で学ぶ」ことの意味
寿司の技術習得は闇雲に練習してもうまくいかないことも多い。
先生の説明通りの手順が、なぜか自分には難しい。
でも、先生たちも色々な手順を教えてくれる。
「この方法が難しければ、こっちの方法でやってごらん」
別の方法で試してみると「あ、できた」なんてことも多い。
今や検索をすればなんでもインターネットで探せる時代。
魚のさばき方も動画で見ることもできるが
細かな感覚や所作などは、動画から学ぶことはできない。
自分に合った色々な方法を模索し、それが成功したときに
やっぱり生で教えてもらうことに意味があるということを実感するという。
クラスメイトからの刺激
寿司学校では海外就職・国内転職・開業と目指すゴールは人によって異なるが
「寿司を学ぶ」という意識と目的は皆一緒だ。
同じ目的を持った、年代もバックグラウンドも全く違う生徒が集まる場所は
梶氏にとって刺激的だ。
授業後に皆で飲みに行くこと話題はもっぱら寿司のこと、将来のことだ。
将来、開業したいと考えているクラスメイトが多く
それに刺激を受けた梶さんもいつかは自分の店を持ちたいと思うようになる。
「僕のスタイルの寿司を、僕の雰囲気の店で食べてもらえるような寿司バーのようなお店が理想。
ぼんやりしていた将来でしたが、日々具体的に描けるようになった気がします。」
学校ならでは!思う存分練習しよう
寿司職人になるには、店に入ってから10年以上の修業が必要と言われる。
「もちろん、昔ながらの修業が悪いとは僕は思っていません。
むしろ学校に入って、修業が必要な意味が分かったんです。」と梶さんは続ける。
一人前になるためには練習が必要だ。
魚をさばく練習をするためにはもちろん魚を仕入れる必要があるが
失敗した魚は店には出せない。つまり店で失敗すればそれが損失になってしまう。
高い魚になればなるほど修行を重ねた職人しか扱わせないのはそのためだ。
触らせてもらえるまでに時間がかかるので、一人前になるまでに時間がかかる。
その点学校では、最初から魚を触る練習がある。
慣れてくると1人で大きなサーモンを丸々さばくようなこともある。
間も無くニュージーランドに向けて出国予定の梶氏。
数ヶ月後には和包丁をスーツケースに入れ、
一人前の寿司職人を目指しニュージランドでも練習を続けていることだろう。