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苦労と思わない。料理の楽しさ伝えたいオーナーと効率化された仕事は物足りない料理人の寿司屋

東京すしアカデミーの『江戸前寿司 集中特訓コース』130期の卒業生である、山口さんが「鮨と酒 切り札」というスタイリッシュな寿司屋を町田で開業。店長さんは同期の釜澤さんが務めています。

卒業生チームが営業するお寿司屋さんで職人見習いを募集されるということで、すしアカデミー講師の小森と編集部の鈴木がお話を聞きに行きました。

鈴木:山口さん今日はよろしくおねがいします。「鮨と酒 切り札」の求人募集の取材ではあるのですが、アカデミーの受講生時代のお話とか、これまでの飲食業界のご経歴なんかも聞けたらなと思います。

山口さん:えー!釜澤さ~ん!(照)

鈴木:ぜひ釜澤さんも一緒に。

(※釜澤さんは仕込みの作業中)

鈴木:山口さんは切り札開業前からイタリアン居酒屋を経営されているそうですが、お寿司屋さんに興味をもたれたのはどうしてなんですか?

山口さん:きっかけは僕の店の隣に昭和49年から続いている老舗のお寿司屋さんがあったんです。とても仲良くしていただいてて、でも店主の方は景気不景気関係なく65歳で辞めるそうで。

老若男女問わずお客さんが集まるお店だったんでつぶすのはもったいないと。そこでやりたいなと思ったんですよ。お寿司を。でも職人さん雇うにも自分に知識がなかったので学校に通おうかと思いまして。

深夜2時まで働いて朝7時前の電車で学校に通った

鈴木:2ヶ月の集中特訓コースを受講されたんですよね?

山口さん:はい。働きながら。学校行って、仕事場戻って、仕事2時ぐらいまでやって。朝6時50分に橋本から出る電車にのって。

鈴木:ではかなりお忙しい2ヶ月だったんですね。

山口さん:でも楽しかったですよ。

鈴木:イタリアンのお店ではご自身でシェフもされていたんですか?

山口さん:はい。

鈴木:じゃあもう他の生徒さんと比べても覚えるのが早かったのでは?

山口さん:どうでしょうか。それは先生が判断することなので僕はなんとも。

鈴木:お魚さばくにしても割とスムーズに?

山口さん:うーんまあでも、しっかり教えてもらったことがなかったので、そういう環境に居れたことはすごく感謝しています。

鈴木:今回のお店を同期の釜澤さんと一緒にやろうってなったのはどんな経緯だったんですか?

山口さん:2店舗目を出したくてずっと物件を探してたんです。で、この店をスケルトンで見て。ここはお寿司屋さんに向いているなと。で、釜澤さんにすぐ連絡しました。お店出すんだけど一緒にやってもらえない?って。

小森:それは卒業後ですか?

山口さん:卒業して1年ぐらい経ってからですね。去年の夏だったと思います。知らない人雇うよりかは知っている信用出来る人の方がいいので。

小森:その頃釜澤さんはどちらにいらっしゃったんですか?

釜澤さん:僕はその頃は港南台の回転寿司で働いていました。友達がやっているお店や、卒業生がやっているお店を夏休みに手伝ったりもして。

山口さん:断られたらイタリアンにしようかなという気持ちで連絡しました。

鈴木:選択肢は釜澤さんだけだったんですか?

山口さん:そうです(即答)。だってずっとスカウトするって言ってたもん。

小森:卒業後の打ち上げの時にそういう雰囲気になっていましたよね。ちなみに釜澤さんは当時働いていたお店の仕事がつまらないってずっとおっしゃってました(笑)

仕事がつまらなかった

釜澤さん:つまんないですよ

一同:(笑)

小森:一から調理したいのにやらないお店だって(笑)私よく覚えてます。

鈴木:釜澤さんはお話いただいていかがでした?即決でした?

釜澤さん:そうですね。アカデミー卒業して、実際にお寿司屋さんに入るってなった時に、なかなか厳しい世界だぞっていうの体験された方が多いと思うんですけど。

まぁ、僕もご多分にもれず。あれ?ちょっとイメージと全然違うなと。なので定住せず友達の店を手伝ったりしてて。でもそろそろ就職決めなきゃいけないなって思っていて。

その時に声をかけてもらったんです。これも何かの良い機会なんだなと。タイミングというか。まあふわふわしていたから声がかかったんでしょうし。ふわふわしてなかったらお断りしてたと思いますし。

小森:ある意味色んな条件がうまくいってお店が立ち上がったっていう事ですね。

鈴木:切り札さんの一番の売りを教えて下さい。

山口さん:種類豊富なお酒とワイン。それに合わせたネタと。あとシャリが美味しいってよく言われるんですね。おまかせコースは人気商品です。

鈴木:それはお米の銘柄にこだわっているからですか?

山口さん:釜澤さんがブレンドしてくれて。色々試してたんですよ。ああじゃねえこうじゃねえって。で、これってなったら、あ。これ!ってなって。

鈴木:釜澤さんはお米の知識は詳しかったんですか?

釜澤さん:そうでもないです。

鈴木:試行錯誤する中で決まったんですね。

釜澤さん:そうですね。今知識だけなら手に入れようと思えばいくらでも入るんで、それを見ながら実際試しながら、あれ混ぜてこれ混ぜてって。学校で頂いた知識も参考にしながら。足したり引いたりして。

山口さん:学校の教科書とか今でも助かってますよ実際。

小森:嬉しいですね。確かに迷った時の指針になりますよね。

小森:お客さんは地元の方が多いですか?

山口さん:そうですね。お客さんは地元の方とか企業の社長とか接待、同伴とか。

小森:釜澤さんがお寿司を握りますよね?コースだと色々な物が出るじゃないですか。山口さんもお店に立たれるんですか?

山口さん:立ちますよ。まあ細かいものとか、つまみ系を出しているんですけど。今回募集するのが僕がイタリアンの店に戻らないといけなくて、それも含めて募集しようと。

小森:では今山口さんがされている仕事をしてもらうんですね。

山口さん:はい。それともう一店舗うまいこといけば出したいなっていうのもあって、そのためにも育てたいなと。

小森:切り札のコンセプトは当たったという感覚がある?

山口さん:はい。東先生のアドバイスのおかげです。

小森:この席数でおまかせだと、結構大変ですね。

山口さん:そうですね。なので握りでもう1人増やして。募集というのはそういう意味合いも含めてですね。

小森:やっぱり相性みたいなのが大事だと思うんですけど、どういう方が来てくれたらいいと思いますか?

釜澤さん:あんまりバリバリの経験者じゃない方がいいかもしれないですね。逆にバリバリの方だともったいないかもしれないです。最初は僕が教えるので一から教わりたい方がいいと思います。

山口さん:フランクな会話をお客さんと楽しめることを重要視しています。肩肘はらず、会話でお客様を歓迎したいという気持ちがあるので。この間来てくださった卒業生の方々も大歓迎です。

苦労と思ったことがない

鈴木:お店を立ち上げて9ヶ月の中で苦労されたことは何かありますか?

山口さん:苦労?苦労ですか。うーん。苦労という気持ちになった事はないですね。

鈴木:!

山口さん:自分の力が足りなくて勉強不足な部分はいっぱいあって、それは改善していかなければって部分はあります。でも辛いとか苦労とかはないですね。好きで始めたことだから。辛いって思うことじゃないなーと。

釜澤さん:かっこいい事いいますね

一同:笑

釜澤さん:本当っすか?

山口さん:本当です。やっぱ個人店は一店舗だったらワンマンで自分のわがまま通せばすむけど、やっぱり店舗を広げたいなと思っているので、人にお願いするっていうか、自分の考えを伝えてお願いするって事の大事さに今すごい直面していて。

だから、自分が掲げた企業理念というか夢とかっていうのをどういう風に伝えればいいのかなって。飲食ってなかなか人が集まらないものだから。

言葉としてしっかり伝えていかなければならないんだけど、まだ上手に人に伝えることが出来てないっていうのがすごく身に染みて最近分かってきました。

鈴木:どんな企業理念なんですか?

山口さん:飲食業はコックさん要らなくなっていくと思うんです。でも世の中に料理をしたい人って絶対なくならなくて。そういう料理を愛してる人達を集めて美味しいものを作ってお客様に食べてもらいたいなって。

冷凍食品を揚げるとか。料理は簡素化できちゃいますから。セントラルキッチンとか。工場の中で作ったものを食べれば安全ですよとか。でも自分はちょっとヤダなあと。

小森:やっぱり料理人さんですね。でもバランスを取るのが難しいですよね。こだわろうと思ったらそれこそ10分で出来ることを2時間かけたくなっちゃう。でもそれは誰がやるのって。

山口さん:そうですね。こだわり過ぎてもだめです。お客さまに喜んでもらえるものを出したいっていうのがゴールであって、その過程で美味しい物を出せたらなっていう思いがあります。

鈴木:そこに共感してくれる人を集めたいですよね。

山口さん:もうちょっと上手に言えるようにしておきます。すいません。

一同:笑

小森:釜澤さんはこのお店をまかされて9ヶ月、進化してるなっていう感覚はありますか?

釜澤さん:そうですねえ。当初とはメニュー全然変わってるんですよ。50%は変わってます。

小森:釜澤さんは和食の経験があるので、それがだいぶ生きていると思いますけど。

鈴木:髪を短くされているのはスタイルなんですか?

山口さん:そうですね。そしたら怖くて入りづらいって言われて(笑)。今伸ばしているんです。

編集後記

山口さんと釜澤さんは40代の同世代コンビ。料理の楽しさを伝えたいオーナーと、効率化された仕事に物足りなさを感じていた料理人が絶妙なチームワークで切り盛りしているのが「鮨と酒 切り札」です。

山口さんの謙虚で誠実なお人柄にはお話をしていて非常に癒やされましたが、この先の展望を語る瞳の奥には力強い意思が感じられました。

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