寿司でHAPPYに!外国人向けの寿司教室を開業の森下さん 会計士と二足のわらじ
今回は「週末江戸前寿司ディプロマコース(現在の江戸前寿司週末特訓コース)を卒業後、都内で外国人向けの寿司教室「Tokyo Sushi-Making Tour 」を運営している卒業生の森下 直也さん(30歳・合同会社Morris 代表 兼 寿司講師)にお話しを伺いました。いつも生徒さんたちと集合をする場所でということで、北千住駅前で森下さんと待ち合わせ。駅近くにある電気大学そばのかわいらしい一軒家へ。
玄関を入れば、そこはご自宅のキッチン兼寿司教室のスペース。モニターがあって、寿司の歴史やマナーなどのうんちくを流して説明するのだそうです。写真のかわいい暖簾は、森下さんのお手製なんだそうですよ!
「シアワセに生きたい」と語るTokyo Sushi-Making Tour の森下さん
Q1.Tokyo Sushi-Making Tour を始める前の職業は何をされていらしたのですか?
森下さん:起業前も今も会計士です。現在は非常勤で会計事務所勤務をしています。会計事務所を週3回、寿司教室を週2−3回のペースで、仕事をしています。
Q2. なぜ東京すしアカデミーに入学されたのですか?
森下さん:実は、東京すしアカデミーに入学する前から寿司を教えていましたが、もっと寿司の知識を深めたくて、仕事を続けながら通える週末のクラスに通うことにしました。
O3. 東京すしアカデミーで学ぶ以前からお寿司を教える経験があったのですね!
森下さん:はいそうなんです。もともと会計士の専門学校で講師をしていたこともあって、人前で話をすることは好きなんです。大学在学中に会計士の資格をとって、そのまま社会人になるまで専門学校のアルバイトで、講師として、テストの解説講義などをしていました。もっと遡れば、小学校の時には、小学校の先生になりたいと思っていた時期もありました。自分で考えて伝えることは、たぶん得意な方だと思います。そして2013年に「寿司を教えること」との運命的な出会いがありました。
Q4. そのお話をぜひお聞かせください!
森下さん:私の寿司教室は、2013年10月 ちょうど東京オリンピックが決まったころにスタートしました。2013年の8月に日本橋にあった寿司教室に行ったのがきっかけでした。その帰りに、「おもしろい!これ教えちゃおう」と思ったんです。
実はその頃、ちょうど3ヶ月のフィリピン語学留学から帰ってきたばかりで、日本に帰ると英語を使うチャンスが無いし、もったいないなと感じていました。そんなことを思っていたところで「寿司」との出会い。
旅行も好きだし、旅行者と話して日本の良さを知ってもらう手段にもなるかなと。ちょうど会社も退職して、留学帰りで、転職活動も何もしていなかったので、ダメ元でやってみようと動きだしました。
8月末にホームページを作って、9月末に東京オリンピックが決まって、運命的なものも感じたことを覚えています。開始当初はインターネットの掲示板に、「お寿司を教えますよ」というのを載せて2-3名集った程度。
試行錯誤しつつ、最初の半年は、月4-5名くればいいかなくらいでやっていたんです。でもそういう状態が続くとこれでは食っていけないということで、再び会計事務所でも働きはじめました。
事務所で非常勤契約を結んでもらって、寿司教室を週2-3回と会計事務所週2-3回、それぞれ半々くらいのペースで働くスタイルができあがりました。最初は観光客もほとんど来てくれないんですよ・・・
浅草でビラを撒いていたこともありましたが、全然受け取ってもらえない・・・。反響がない状況で、全然ダメなときもあったんです。そこで目を付けたのが、日本語学校。外国人がいるところにいって教室をやっちゃったらどうかって。
日本語学校に手当たり次第に電話をかけて、こういうことをやってますって、やらしてもらえませんかって営業して、1年くらいの間、点々と学校をまわって教室を開催していました。
そうこうしながら様々なノウハウがたまってきたころ「trip advisor」にレビューを依頼するようになってから観光客が来るようになり、3年目くらいからコンスタントにお客様がいらっしゃるようになりました。現状は月平均100件くらいですかね。
Q5. なるほど!ちなみに、観光客にとって、ロケーション的に北千住はいかがですか?
森下さん:観光客にとって、北千住というロケーションは特に問題はないようです。滞在は新宿近辺が多いようですが、旅行感覚でどんなところでも来てくれますし、電車に乗って来てくれる。
苦ではなさそうですね。浅草で、とも考えたこともありましたが、忙しくなりすぎても困るので・・・とも思いまして。あくせく働きたくないというか・・・(笑)
Q6. お客様が来すぎるのも困るということですか?
森下さん:もともとこういう働き方をしているのは、家族と過ごす時間を多く取りたかったからなんです。サラリーマン時代は、朝から23時くらい迄の勤務で、これでは、将来家族と一緒に過ごす時間がないと思って会社をやめました。
時間をコントロールして、いいお父さんになりたいとも思っていましたし、自分でいくつかの仕事をしながらコントロールしていきたいと考えていました。今でもワークライフバランスを崩さないように仕事を入れてまして、忙しすぎるなと思った場合は仕事をお断りをすることもあります。
実は、3ヵ月前に第一子が生まれまして(2017年11月現在)、1-2ヵ月の間は妻の産後ケアで休業していました。そういうライフスタイルを実現するためにも「寿司」は強いアイテムです!
切り口をかえれば、すごく目立てる。英語で寿司を教えることでプロの板前さんのような技術がなくても仕事として成り立つんだなと思います。
Q7. 東京すしアカデミーの受講はいかがでしたか?
森下さん:東京寿司アカデミーで学んで本当によかったと感じます。2013年に出会った「1日のお寿司体験講座」とは、違い、「体系的にお寿司を学べたこと」そして、「寿司職人の先生方がどれだけの技術をもっているかに直に触れることができたこと」で自分が教える上での話の厚みができました。
そして何より、技術的にもスキルが向上しました!
もうひとつ、同じコースに通う同期生仲間との関係。約1年もの間、ほぼ毎週末に寿司を習いにくるユニークな同級生たちの様々な思いや考え方に触れることができ刺激を受けました。
そうした関係を求めて、すしアカ(東京すしアカデミー)に通ったというのも理由の一つですね。皆さんユニークな人たちでしたが、自分が1番変わっていましたねぇ。(笑)
Q8. 外国人のお客様にお寿司を教えることの難しさは何でしょう?
森下さん:どの国の方にも英語で教えるのですが、寿司や日本文化に関する言葉ひとつひとつの微妙なニュアンスをお伝えすることが難しいですね。例えば「握る」という一言だけでも、ダイレクトな表現にならないように伝えたりするのに気を使っています。
また寿司教室は、寿司店ではないので、レッスン用として使えるネタが限られていること、さらに、お客様によって好みが違ったり、ベジタリアンの方がいたり、宗教的に食べられない食材があったりなど対応が難しいですね。
そして今でも、英語ネイティブの方にナチュラルスピードの英語で一気に話されると聞き取れないこともあるので、英語力アップはいつも心かげています。
Q9. 英語も寿司もできる森下さんは海外で寿司職人になろうとは思わなかったのですか?
森下さん:海外旅行は好きですが、旅行に行けば行くほど、日本が大好きだな、と実感します。基本的に日本が一番好きなんです。食べ物もおいしいし、人もいいですし。
これは妻も同意見ですが、海外行くことだけが国際交流ではないとも思っています。この間は、パナマの方が受講にいらして、旅行では聞けないことを聞くことができました。
国内に目を向けると僕自身は、東京出身下町育ちで東京しか知りません。地方暮らしにも魅力がありますが、情報やチャンスがたくさんある東京から離れられないですね。
東京すしアカデミーで受講していた頃には「海外で寿司職人を目指す」のもありかなと思ったことがありましたが、飲食業に就職することにはにどうしても抵抗がありました。「寿司職人」には憧れる。
でも寿司職人はたくさんいても、一流は本当に限られているだろうし、自分はスペシャリストより、いろいろやりたいタイプなので、寿司職人という一つの道を極める、というのをしようと思わなかったんです。
そして、ずっと立って仕事をするのは厳しいかなと・・・すしアカデミーでも朝から夕方までバテバテになってやっていたことがあり、ちょっと無理かな思いました(苦笑)。
Q10. 今後の展望と寿司インストラクターを目指す方へメッセージをお願いします!
森下さん:Sushi-Making Tourは、まだまだ伸びしろはあると感じてはいますが、積極的に拡大することは考えていません。仮に寿司教室が週6だとすると嫌になってしまって、僕自身がお客様とのコミュニケーションを楽しめなくなると思うんです。
はじめは、お客様が来れば来るだけ楽しかったですが・・・。疲れてお客様への接し方に笑顔がなくなってしまうようであれば本末転倒。お金はちょっとでいいし、あまり欲はないんです。
一番大切なことは「シアワセに生きたい」。そのために仕事があると思っているので、それを崩さないようにユッタリ系でやっています。
今のレッスンは、8名定員、最初に講義のスライドを見てもらいながらレクチャー、そして「裏巻き」「飾り巻き」「握り」「軍艦」のワークショップの2時間半。寿司作りを楽しんでもらうことに主眼を置き、魚捌きはありません。
寿司のインストラクターについて、やりたい方がいれば、見学に来て下さい。英語で寿司を教えることについてのティップスをお教えすることもできると思います。実際に夫の海外駐在が決まった奥様方が、渡航前にホームパーティーで寿司でおもてなしを、という思いからか、あわてて駆け込んでくることもありますよ(笑)。
森下さんもお客様もみんな笑顔のTokyo Sushi-Making Tour!
編集後記
かつては、朝から23時迄働いていたという森下さん。家族との時間を大切に「シアワセ」に生きたい、という信念をもってこれを実践。こうした理想を語るのは誰にでもできるが、その理想を実現するために、30歳にして「会計士」、「英語」、そして「寿司の技術」と着々と必要なスキルを積上げている。
サラリと語る森下さんだが、このワークライフバランスを保ちつつも、しっかりと次の人生ステージを思い描いているのだろう。ただただ忙しく日々を過ごすことに追われている私には目から鱗が落ちる思いがした。寿司の伝道師として、これからも互いに切磋琢磨してまいりましょう!