レベルの低い日本食を変えたい!メキシコで総料理長の松本さん 海外就職のコツ伝授
日本食の素晴らしさを伝えたい
東京すしアカデミー卒業生の松本武也です。現在メキシコのレストラン『IZAKAYA KURA』と『KOKU』で総料理長を勤めています。
実は私は元々海外を目指していたわけではなかったんです。知人がメキシコでレストランをオープンするということで立ち上げのヘルプでメキシコに行った時に、現地の日本食を食べたことがきっかけです。
とにかく、レベルが低かった。私は飲食業の経験もありましたので日本食のすばらしさをこの国でもっとしっかり伝えなければと勝手に使命感に駆られてしまいました。
実際住んでみると気候は1年通して温暖ですし、親日のメキシコ人が多いので暮らしやすい魅力的な国です。
メキシコでマグロが大人気!?
前に勤めていた店の一番人気は「SPICY MAGURO DON」です。レタス、アボカド、炙った漬けまぐろ、まさご、ネギ、ピリ辛マヨネーズ(チポートレというメキシコの唐辛子を使ったもの)うなぎのタレの丼ぶりです。月に1000食くらい注文がありますね。
この丼ぶりにも使用していますが、メキシコで今人気の食材は本マグロです。メキシコでは、エンセナーダという場所で本マグロの蓄養が盛んにおこなわれているのですが今まではほぼすべて日本への輸出用で、メキシコ国内には出回っていませんでした。
店で扱っているまぐろはエンセナーダの日本人が経営しているまぐろ業者のまぐろなのですが、ここの業者がこれからどんどんメキシコ国内また中南米、ヨーロッパにも販売をしていくということで国内でまぐろを使ったイベントを開催しています。
今までメキシコ人はあまりトロを好まなかったのですが、最近では人気メニューの1つになってきました。
現地では奮闘の日々
日本には普通にあってもここにはない食材があります。逆に日本にはない食材がたくさんあります。見たこともない魚や野菜。こういった地の食材でおまかせで寿司を食べてもらうことはとてもやりがいを感じます。
またメキシコ人の育成には苦労しています。国民性としておおらかでアバウトなところが寿司職人にはむかないことがあります。例えば飯を炊くとき米や水の量をなかなかしっかり計れません。
どんなに忙しい時でもついつい話に夢中になってしまって手が止まってしまうこともしばしば。日々奮闘しています。
メキシコ渡航前にやるべき事
一番大切なのは必ず渡航前にビザを取得しておくことです。申請から取得までだいたい1ヶ月かかります。現在では、メキシコ国内での就労ビザの発行ができなくなりました。
また、海外で使える医療保険も加入しておいたほうが無難です。メキシコの社会保険でかかれる病院では安全安心な治療を受けられないことがあるからです。
私立の病院では高度な治療を受けることができますがかなり高額です。メキシコでも高額医療保険に加入することは可能ですが、はじめは日本で加入してくることをおすすめします。
そしてもう一つは治安ですね。メキシコは格差社会です。低所得者の住むエリア、高所得者の住むエリアは完全に区切られています。
やはり低所得者が多く住むエリアの治安は良くないです。犯罪に巻き込まれないためにも渡航前にメキシコについて調べ多少の知識を持つことは大事だと思います。
まずは、挑戦。寿司があれば勝てるのだから
海外で働いてみたいけどなんか難しそうだな不安だなと悩んでいる方も多いかと思います。でも一度でも海外で働きたいと思ったら行くべきだと思います。
海外での生活は苦労もあるでしょうが、その経験は今後の人生にとてもプラスになるでしょう。あまり考えすぎずにとにかくやってみることも大事です。寿司の技術があれば世界中どこでも仕事があると思います。
世界で日本食がメジャーになった今でも海外に出ると日本食イコール寿司というイメージがまだまだ強くあります。
現在海外でも様々な形態の日本食レストランがありますが、やはり寿司のニーズは多く海外の日本食レストランで働くには寿司の技術はマストだと思います。
日本の伝統的な寿司の技術を身につけ、海外で寿司を握るということにとても誇りを持てます。まずは、挑戦してみることが大切です。
更なる目標に向かって
昔私が総料理長を務めていたMOGはメキシコ有名雑誌にてメキシコシティレストラン部門で1位に選んでいただきました。また、メキシコルイビトンのレストランガイドにも掲載していただきました。
MOGは現在、開店と同時に満席となり平均40分待ちが閉店まで続くという人気店です。スタッフ一同とにかくおいしいものを一番おいしい状態でお客様に食べていただくことをモットーにやっています。
今は別の店で2店舗の総料理長を兼務していますが、これからも初心を忘れずにお客様に感動を与え続けられるよう努力していきます。今後の目標は、メキシコ発日本食レストランとして世界に挑戦することですね。