寿司学校 上達する人、しない人
同じ二か月コースでも技術の上達が早い生徒と遅い生徒がいます。人間のやることなので個人差があってあたりまえですが、その差はなんなのだろうか。寿司の上達のコツについて東京すしアカデミーの東 健志郎講師に聞いた。
東 健志郎(あずま けんしろう)
昭和2年創業の江戸前鮨、日本料理の店で修行。
11年の勤務の中で店長、板長、料理長と経験。
東京すしアカデミー株式会社に転職後 講師として1年。
海外のニーズを体験すべく、同会社の海外初出店舗の料理長兼マネージャーとして
日本食レストラン中国誠寿司広州店(150席の大型レストラン)を立ち上げ、その後香港の出店にも関わり任期の1年で帰国。
海外の体験を元に同会社同会社東京すしアカデミーにて講師として帰属し現在に至る。
寿司に関する仕事の仕組みを理論的に伝えることをモットーとしている。
どのような生徒が早く上達するのですか?
同じ二か月コースに入った生徒同士でも、技術の上達具合にはもちろん個人差がでます。
同じように未経験で入ってきても、2か月後の卒業時点で
かなりのレベルまで仕上がる人とまだまだ練習が必要だなという人がいます。
上達が早い生徒はモチベーションが高く、自主練習などにも余念がありません。
必要なのは許容力と柔軟性でしょうね。
教わったことが初めから100%入る人はいないけど、頭に新しいことを蓄積するスペースのある人が伸びます。
講師が伝えたアドバイスを受けて、すぐにそれまでの自分のやり方を変更できる人が伸びますね。
上達するためのコツはあるのでしょうか?
シンプルに頭と体の両方で確実に理解することが握り上達のコツです。
頭で理解するのと体で覚えるのって似ているようで全然違います。
人によって手の大きさが違うのでシャリを手に取る感覚も人それぞれなので
シャリの重さは体感で覚えるしかないんです。
さらに綺麗な寿司を握ろうとする段階では頭の中で「行程」を理解することが肝心。
寿司屋で働くとこれらを全て理屈ではなくて「体感」で覚えろと言うことになる。
「行程」を現場では教わることができないんです。
だから覚える効率が悪く、長い年月がかかる。
寿司学校に通うメリットはこの両方が同時にできるということなんですね。
どのくらい練習をすればコツをつかめますか?
勘所の良い人はすぐコツをつかむし、そうでない人もいる。
最初からある程度綺麗に握れる人は最後まで綺麗ですね。
でも、初めは見込みがなさそうに見えても後半になって突然良くなる人もいます。
そういう人はどこかの時点で勘所をつかむんです。
しばらくは成果が出なくても練習を続けるうちにある瞬間にグッとうまくなるとか。
そういうことがあるのが寿司の世界です。
勘所のつかみ方、つかむタイミングは人によってそれぞれ違う。
つかむまでは理解をしながら、ひたすら練習あるのみなのです。
もっと上手になるためにはどのようにすればいいのでしょうか。
練習はもちろんですが、自分で美味い寿司を食べ続けることが大事。
寿司ネタも食材に応じて厚みを変えたり、シャリとの組み合わせ方、
わさびの利かせ方、温度調整などやるべきことはたくさんあります。どれが欠けてもおいしくないんです。
寿司職人は自分の体験が命。
自分が美味しいと思ったものしか、お客さんには出せません。
その「美味い寿司」の引き出しがどれだけあるかが寿司職人の幅でもあるんです。
さらに、寿司職人は見られる仕事ですから客観的に自分の姿を見ておくことも必要です。
例えば自分の握りを動画に撮って先生のものと比べてみるのもいいですね。
本人ができているつもりでも実際に動画を見比べると自分はガタガタだというのがわかるはず。
私などは修行時代に動画を簡単に取れる時代ではなかったですから、板場に鏡を置いて練習していました。
今の生徒も、それくらい頑張って練習に打ち込んでほしいですね。